俺の名前は田中垂書(たなかたれかき)、しがない週刊誌記者だ。訳あって、あのシンガーソングライター米津玄師を密着取材をすることになった。普段あまりメディアに出たがらない彼が密着取材を承諾したのは正直驚いた。なんせ去年の紅白歌合戦に出演してから公には出ていないはずだ。
なんてことを考えながら場所指定された、都内某所のマンションの一角に辿り着いた。俺は予め手渡されていた合鍵をポケットから取り出し507号室のドアを開ける。少しばかり薄暗い廊下を通るとそこには━━━━━━━━━━━━━━━
いた
「.....」
「あの...米津玄師さんですよね?」
「.....」
「あの?」
「...Zzz」
寝ている。
えーと、何?目え開けたまま座りながら寝ちゃってるよ、エコノミー症候群とかなりそうだよコレ、どっからどう見てもヤバい奴じゃん。どーすんのこれ、なぁ
夢ならばどれほどよかったでしょう~♪
「Zzz.....!!ウェッ」
どうやら起きたらしい、米津玄師は毎朝アラームにlemonを設定しているのか...自分の歌声をアラームに設定するとは中々変わっている。
その後も彼は終始無言だった。取材の中で発した単語数は片手で数えられる程だった、陰キャかよ。ともかく彼の一日が始まった。朝食はコンビニで買うらしい、とりあえず彼についていくことにする。
歩行障害みたいな歩き方をしながらようやく目当てのコンビニに辿り着いた。
う、他人からの視線が痛い、何とかならんのかあの歩き方。
その後も彼の奇行は続いた。朝食のニッヒン黒のスーガーカップ醤油味を買ったかと思えば、それを瓶に詰め込んで火を放ったり、階段を小学生3年生みたいな方法で降りたり...数えればキリが無い。
なんやかんやで彼とのこの世の終わりみたいな一日が終わりを迎えようとしていた時、おもむろに彼は呟いた。
「.....今日僕の誕生日なんスよね」
「え、マジですか.....おめでとうございます」
返答に困る。
「...」
いや、なんか喋れよ
「.....」
おい、
「1曲...birthdaysong歌ってくれませんか...何でもいいんで」
ほほう、birthdaysong。あの米津玄師にbirthdaysongね、へーすごいじゃん。へー
と、
その時、俺の脳内に彼との一日がリフレインする━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
そうか、俺は理解する。
ここがターニングポイントだと。
この地点が【分岐点】なんだと。
た っ た 今 理 解 し た
だとしたら、俺が唄うべきbirthdaysong
は1つ。
それは━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
ここは禁断の惑星
忘れ去られた革命
漠然とした雑念の広がる発展の脱線
核戦争に敗れ 悪戦苦闘する文明
君の住む楽園の百年後 太陽なんてとうの昔に死んだよ
地下の核シェルターで人間は細胞のみでの生活を始める
機械任せで未来泣かせな博士の異常な愛情により
バイオ倍増し大量のプルトニウムの雨が地上では降るという
連ねた理由など無いのに上辺だけで比べたりするから地球は宇宙の中で孤立化する取り憑かれて疲れたプラネタリウム
アイロニカルな最後になるか愛を抱くか君自身が太陽になるんだπの解を担うパイオニア先読みな